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『ミノタウロス』読書日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-05-11佐藤亜紀『金の仔牛』と時計

佐藤亜紀『金の仔牛』と時計

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連載終了した小説『金の仔牛』(講談社小説現代』2012年2月号〜5月号連載*1)はまだ第三回を読んでいるところ。ノロノロ読みで申し訳ないんだけど、この小説についてふと思いついたことを忘れないうちに書いておきたい。

d:id:Portunus さんの優れた論考*2から

一七一五年、ルイ大王崩御の折、ヴェルサイユ宮殿のそこここでは時計が一斉に四時十五分を打ったと伝えられている。宮中の時には専門の侍従が付いており、日々たゆみなく時計の螺子を巻き時間を合わせていたので、これはさして驚くべきことではなかろう。この時計の精とも言うべき者たちの目に見えない活動が、目に見える世界に、一時間に四度、日に九十六回のささやかな徴のひとつを表した瞬間、廷臣たちの上げる、国王陛下崩御、国王陛下万歳の声に迎えられて、曾孫である齢五歳の皇太子は新王ルイ十五世となった――が、残念なことにこの逸話は、これからお話ししようという物語にさしたる関係はない。

P51

http://d.hatena.ne.jp/Portunus/20120202/p1

『金の仔牛』で、「残念なことにこの逸話は、これからお話ししようという物語にさしたる関係はない」のになぜ冒頭にわざわざ時計の逸話を書いているのか、私は最初読んだときは不思議だった。

d:id:Portunusさんが指摘されているように、この小説の精度の問題、作者の造詣の深さ、題材として株式市場と時間が切り離せないことの暗示付け、また、

で指摘されている、いわば小説全体の時計としての巧緻さ、といったこともあるだろう。

そして今回書いておくことにしたのは、もうひとつ、ルイ大王、宮殿、国王、といった文章から素直に(?)読むなら、

  • 王権神授説と時計
  • 絶対王政と時計
  • そしてルイ十四世の死により変化していくフランス

暦や時計は古来、権力のありかを示すものでもあったわけで、この小説でも権力はどこにあるか、といったものが、時計のありかによって示されているのではないかとも思った。

ちなみにルイ14世の日常生活は

その生活は規則正しく、サン=シモンは『回想録』で「暦と時計があれば、遠く離れていても王が何をしているか言える」と述べている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A414%E4%B8%96_(%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E7%8E%8B)

といったものだった。